児童文学概論

ヤングアダルトジャンルを読み、感想を示します。個人の駄メモです。ネタバレあり要注意。

ゴーストの騎士

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ドイツの作家コーネリア・フンケの作品。「どろぼうの神さま」で有名な作者の2011年に本国で出版された本だ。

とても読みやすく、シーンの描写も丁寧だし、人物を描くのもとてもうまい。幽霊や騎士、古い学校といったワクワクさせる要素もあるし、少年と少女の恋愛的な要素もある。

とりあえず読んでおいて損もなく、お値打ち感のある本だ。

一点だけ気になる点があるとすれば、主人公ジョンのことがきっと好きで、色んな場面で無条件に助けてくれるエラが、なぜジョンのことが好きなのか。好きになったのかが全く語られないまま、死を覚悟してでもジョンを守ろうとするのは説得力がなさすぎる。

同じ霊が見えるという点だけではなく、何かしらのきっかけがないとそこまでできないはずだ。割とこの2人の硬い信頼関係がベースにあってこそ、この物語は筋を成しているので、もう少しその辺りがうまく語られると尚良かっただろう。

史実に基づいているというのもとても面白い試みだ。完全創作でない分、歴史を知らない日本人の我々が読んでも自然と納得してしまう妙な説得力があるのだ。作者の他の本も読んでみたくなる、そんなきっかけになるようなチャレンジングな作品である。