児童文学概論

ヤングアダルトジャンルを読み、感想を示します。個人の駄メモです。ネタバレあり要注意。

足音がやってくる

f:id:iijanaika:20170617164841j:plain


ニュージーランド出身の作者マーガレット・マーヒーの1982年に発売された初長編にして、イギリスのカーネギー賞を受賞した作品。

かなり昔の作品ということになるが、さすがといったところ。

隙がなく、子供がメインの作品だが、イライラさせられることもなく、大人でもなかなか楽しめた。

バーニーという少年が不気味でイカれた魔法使いの叔父に目をつけられ、どんどん彼のそば、自宅に近づいてくるストーカー的恐怖心を煽る演出がされている。

一応ミステリー作品であり、最後には色んな家族の謎が判明するシーンはベタな部分もありながらも目を丸くする事実もあり、非常に楽しかった。

昔の家庭、家族というのは、今とは違い、非常に固苦しく、規律の中で存在していたのかなと改めて思わさせられた。

勝手気ままな自由なタイプの人間は嫌われ、みんな心のどこかで羨ましく思いながらものけ者にされたのだろうか。

魔力を封印した結果、自分からなにも魅力や取り柄さえなくなったひいおばあさんのように、個性や生き方についてみんな誰の目を気にすることなく、咎められる必要なく、自由であるべきだと伝えているように感じた。

コール叔父の最後の牙の抜け方は腑抜けたというより、幼返りして可愛いという印象を受けた。現実ではあり得ないが、これも愛嬌だろう。