児童文学概論

ヤングアダルトジャンルを読み、感想を示します。個人の駄メモです。ネタバレあり要注意。

魔使いの弟子

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最初は全然面白くなく、読み終わるまでに2ヶ月もの時間がかかったジョゼフ・ディレイニーさんの作品。


ただ、2ヶ月目には中盤から後半を一気に読んでしまったくらい面白かった。

エンジンがかかるまでは遅いが、中盤以降の爆発力は眼を見張るものがある。

タイトルも至極平凡だし、ヨーロッパらしい暗くて陰鬱な雰囲気で、読む楽しみが感じづらかったが、それが最終的にはかなりの武器となる。その表現力たるや正直大人が読んでもかなり怖さを感じた。

子どもが読むとトラウマになるのではないかと思えるほど。

恐ろしい魔女のマザー・マルキンとの戦いのシーンはとても泥臭く妙に生々しい。ハリーポッターのような児童文学だと一騎打ちで秘めた力を解放して大きな敵をやっつけるみたいな感じだが、この本ではなりふり構わず、川に突き落とすみたいな必死感が伝わってくるのだ。

一般人が敵と戦うときっとそんな感じになるに違いないと妙に納得させられる。

またアリスという魔女にはまだなっていないが、これから魔女になるだろう魔女の娘の存在も面白かった。

敵が味方か、こういう存在は物語を本当に面白くしてくれる。いつ裏切るのか、いつ本性を現すのか、物語に緊張感を与える。

アダムスファミリーのウェンズデーのようなとてもキュートで魅力的なキャラクターだ。この作品はシリーズでまだまだ続編があるので、これからどのように変化していくのかすでに気になって仕方ない。

タイトルも平凡とさっき言ったが、実はよく読むとかなり変わった部分がある。魔法使いではなく、魔使いという点だ。

この本では、農夫とか助産師とか職業のひとつとして魔使いというものがある。鉄と塩をゴーストや化け物のような敵に投げて力を弱めたりと、除霊師やバンパイアハンターのような雰囲気だ。

そういう部分はリアリティ含めてオリジナリティがあり、クラッシックな枠を守りつつも現代的な共感できるファンタジー作品と言えるだろう。