児童文学概論

ヤングアダルトジャンルを読み、感想を示します。個人の駄メモです。ネタバレあり要注意。

グリフィンの年 下



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ダイアナ・ウィン・ジョーンズさんの生み出す想像力の結晶のような作品。

時代や時空、種別をすべて頭の中で生み出し、個性的なキャラクターを生き生きと自由自在に操ってひとつの愉快な物語を描く。まさに魔法使いは作者自身なのではないかと思わずほどオリジナリティの高い作品だった。

今作ではケリー学長の魔力の高さが際立っていた。前作のダークホルムの闇の君含めて、魔法をはっきりと使ったのは今回が初めてかもしれないが、通常魔法の効かないはずの不良グリフィンを一瞬で石に変えてしまった場面は意外であり、とても痛快だった。

前作もそうであったが、うまく現代の経済を絡めている点もユニークだ。

今作では教師目線での学校運営と学生目線でのキャンパスライフがうまく交差しながら描かれ、完全なるファンタジーなのに現実味が加わっているのもさすがだ。

最後に恋愛のエッセンスが入るのも、少しオチのために取ってつけた感はあるがイヤな感じもなく、とても好感触で受け入れられる。

最近の作家さんは恋愛を中心にして物語を組み立てがちだが、個人的には好きではないので、こうした作品をよく研究して、恋愛に頼らずとも魅力的で一冊の中で成長を見せることができるという理解が広まるといいなと思う。

今作では若手の活躍が多いに描かれ、とてもフレッシュな魅力や感性に満ちていたのが非常に面白かった。