骨董通りの幽霊省
イギリスの作家アレックス・シアラーさんの作品。ここまで幽霊にぴったり焦点を当てて書かれた作品は、同じくイギリスの作家ジョナサン・ストラウド氏の「ロックウッド除霊探偵局」以来だ。
イギリスでは日本のように幽霊が身近な存在であり、テーマモチーフになるのだろう。
やや大人が読むには捻りがないというか、品行方正すぎるというか、よく言えば分かりやすくてスッキリ読みやすかった。
幽霊省というアイデアですでにある程度の面白さは担保されており、あとはあっと驚くどんでん返しを用意さえすれば良いというのは素人目にも分かるものだ。
まさにその通りの流れなのだが、オチである、幽霊省で働く職員全員がすでに死んでいて幽霊だったという肝の部分は、もう少しうまく隠して欲しかったとも思う。
早い段階であれ、コレはそうなのかなと匂わせていたので、オチが想像できてしまった。ただ、特定の1人が幽霊なのかなと思っていたので、まさか全員とは思っていなかった。ある意味、ちゃんと裏切られたのだが、もう一つ残念なのが、幽霊を探すアルバイトとして雇われた男の子ティムと女の子トラパンスについて。
ほぼこの子たちが主役なのに、あまりキャラクターが深堀されず、魅力があまりにも表面的だったことが悔やまれる。
また、もう少し幽霊探しにおいて、可能性を示唆して欲しかった。ずっと幽霊は見つからない、いないという前提で展開されすぎて、期限のカウントダウンがされていのにハラハラしないのだ。
幽霊はいるし、目の前に現れるけど、どうやって捕まえたらいいか分からないという前提にした方が、展開がよりダイナミックになったはずだ。
その点では、ロックウッド除霊探偵局には巧さは及ばないが、幽霊と一緒に仲良く住み続けるという苦し紛れとも思える最後のエピローグは嫌いじゃないし、これがないとオチ頼み過ぎて余計に安っぽくなっていたかもしれない。
そういう意味で、全体的には悪くなく、読んで損したとは思わない良作だと思う。