児童文学概論

ヤングアダルトジャンルを読み、感想を示します。個人の駄メモです。ネタバレあり要注意。

魔空の森 ヘックスウッド

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ざっくり言うと、ある森の周辺で起きた異変から物語が始まり、次々と意外な事実が明らかになってくるという話。


世界を救うわけではないが、悪いやつをやっつけて新しいまともなやつに取って代わるという感じ。

正直、かなり読みにくかった。物語の進行スピードがとても遅く、さらに時空までネジ曲がったり、人の記憶まで操られるものだから、何が事実なのかわからないまま、読者はその情報を一生懸命抱えて、たらい回しにされるからたまったものじゃない。

さすがに最後の方は、情報を抱えるのをやめて、もう読んでいるだけに近いときもあった。それくらいたっぷり時間をかけて読まなければならいほどボリュームが多い。

伏線もラストに明らかになる大きなものを除いてほぼないので、あまり考えずに読んでも問題ない。

レイナー一族が何なのか、結局あまり描かれなかった。これは読者に想像して欲しくてあえて情報を少なくしていたと思うが、個人的には少なすぎた。もっとそこを膨らませないと、戦う意味や守る意味が薄っぺらく感じた。あっけなく死にすぎだし、なぜそうしていたのかが本当に不明だ。ほぼ、村人1みたいに何の特性も恐怖も感じられない様は、ある意味斬新だった。

逆に言うと、だからこそ面白いのかもしれない。日本人ならきっとそこをある程度きっちり丁寧に書いてしまうだろう。あくまでファンタジーであり、小難しい設定や理由なんて必要ないのだ。

子供の頃、頭の中で想像して物語をただただ楽しくつないでいっていた感覚。まさにそれがファンタジーの原点だと言えよう。

頭の中で王様から騎士、庶民に奴隷を作り出し、それらが次々と自分に語りかけてきて、1人だけど頭の中で会話していた経験のある人は多いはずだ。それがこの物語の肝となっている。

騎士ならドラゴンを倒すし、城にはキレイなお姫様がいて王子様を待っている、独裁的な権力を握るやつは倒すべき悪者であり、人間はちっぽけで森や自然は大きく尊い。そこに理由なんてない。ルールだからだ。

魔空の森というタイトルに相応しく、読む者の頭の中までねじ曲げられる。そんな作品を描けるダイアナさんはさすがだと思う。ただし、ワクワク感は全くなく、作業ゲームに近い地味な作品といえる。