メッセンジャー 緑の森の使者
どこか人里離れた森の先にある、迫害された人たちが集まってできた村を舞台にして物語が展開される。
何とも言えない不思議な魅力のある作品だ。牧歌的でありながら、偽善的ですぐに崩壊しそうな危うさを含む。どこか新興宗教の人たちの集団生活を見ているような感じだ。現実と違うのは森が意思をもっており、そこを通ろうとする人を容赦なく抹殺してしまうことだ。
その森を自由に行き来することができるのが主人公の男の子。タイトルの通り、村では中と外の世界を繋ぐメッセンジャーとして活躍している。村では誰もが何かしらの役割を与えられ、活躍しているという設定だ。
文章は分かりやすく、すぐに読み終えることができる。
ラストは多少そっちかぁと思うとこがあると思う。ただ、自然の厳しさや神秘さ、人々の持つ原始からの恐れのような部分をうまく取り入れており、詩のような世界観だった。
結局、災いの元凶ともいえる、トレードの元締めは、どのような能力を持ち、何を考えていたのか気になる。彼も何かしらの魔法が使えたのだろうか。いや、ここでは魔法ではなくハンター×ハンターや鋼の錬金術師で出てくるような能力に近い気がする。
特にトレードには、手に入れたいものとそれに見合った対価、犠牲を払わなければならない。それは悪魔の契約なのかもしれない。契約することで、ある種の特別な力を得て、願いが叶う。
まさにラストがそうだった。何かを得るには何かを失う。
アメリカの作家ロイス・ローリーは人生における哲学や人間の力の限界、人々を惑わす本来必要ではないはずのガラクタ、自然への畏怖のようなものを美しく伝えたかったのかもしれない。