児童文学概論

ヤングアダルトジャンルを読み、感想を示します。個人の駄メモです。ネタバレあり要注意。

七つの封印 3 廃墟のガーゴイル

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テレビゲームにしたら面白そうなストーリーだった。七つの封印シリーズの三作目。毎回、実は登場人物のキャラクターや個性を持ってストーリーを引っ張るということはあまりなく、敵を中心にブンブンとストーリーが激しく展開される。

だから基本的には防戦から反撃に転じるというテンプレとなっている。まあ子供対モンスターなのでそのパターンが王道であり、ここから外れたストーリーを描けば世間からは斬新だと高く評価されるかもしれない。

今回対峙することとなる騒動の相手はガーゴイルガーゴイルと言ったらもっと小さくて可愛らしいものを想像していたら全然違っていて驚いた。

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もはやこれは魔人であり、知っているバーティミアスのようなずる賢いタイプではなかった。ただ今回はガーゴイルが一体ではなく数え切れないほどたくさん登場し、全員が牙をむいて襲ってくるわけではない。むしろ、あまり攻撃はなかったくらいだ。

ガーゴイルというものは元々魔除けであり、雨どいを伝ってきた雨水を壁から這わすのではなく、少し遠くに吐き出すだすために工夫された彫刻だ。つまり、ガーゴイルを作る彫り師が存在するわけで、その彫り師との物語を含めた不思議な話となっている。

襲われて撃退というベタな作品をカイ・マイヤーさんが子供向きとはいえ書くはずがない。らしさ溢れる、少し胸がほっこりする作品だった。タイトルには廃墟とあるが、厳密にいうと廃墟ではない。もっと文化的、歴史的建造物なのでもう少し違った言い方が欲しかった。

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最後にこの写真を見てほしい。たまたま見つけたフランスのある場所の彫刻だが、前作の悪魔のコウノトリに、今回のガーゴイルが並んでいるように見える。これは偶然なのか、それともよくある組み合わせなのか、とても有名な彫刻なのか…詳しくは知る由ないが、とても興味深く、愉快だ。