児童文学概論

ヤングアダルトジャンルを読み、感想を示します。個人の駄メモです。ネタバレあり要注意。

アンランダン ザナと傘飛び男の大冒険 上

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タイトルのアンランダンは、否定を表すアンにロンドンの正しい発音ランダンを合わせ、ロンドンではない、つまりもう一つのロンドンという意味を持っている。


感想から言うと、なかなか面白かった。どこか不思議の国のアリスを読んでいるような個性的なキャラクターが出てきて物語に花と不思議を添えてくれる。

ニューヨークタイムズハリー・ポッター以降もっとも想像力にあふれたヤングアダルト小説と称したのはあながち間違いではないと思う。

裏ロンドンに迷い込み、奇妙な世界だけどなぜか惹かれ、ほっとけなくてつい干渉したくなる感じは映画版のドラえもんを見ているようでもあった。むしろ、すぐドラえもんとして映画化できるくらいの脚本だ。

この本で面白いのは、主人公はJCであるザナだとばかり思っていたら、親友のディーバが後半の主人公に変わっていたことだ。こんな編成はあまり見たことがない。最初のび太くんが中心なのに、途中からスネ夫がメインに代わるという感じは新しく、斬新に感じた。

イングランド出身の作者チャイナ・ミエヴィルは相当ヤングアダルトを読み込んで研究してきたのだろう。名作のオマージュから過去のパターンからの脱却を懸命に努めている様子が見受けられる。

割と読み進めるのが辛く、その世界に入るまで時間のかかる作品が多い中、このアンランダンは確かに優秀な作品だと言える。あとは下巻でどんな大どんでん返しを起こせるかだ。

敵であるスモッグに対してどこまで哲学的に掘り下げられるのか、少女たちは何につき動かせれて、成長を遂げるのか。珍しく期待して下巻が借りられそうだ。