児童文学概論

ヤングアダルトジャンルを読み、感想を示します。個人の駄メモです。ネタバレあり要注意。

盗まれたコカコーラ伝説

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ヤングアダルトって言葉に相応しい一冊。いささか表現力は乏しい部分もあったけど、おやつ感覚で楽しめました。


対象は中学生くらいかな。見た目では小学生向けだと思うでしょうが、意外と内容は難しとこもあるので、きちんと理解して読むとなると中学生からかなと。

コカコーラのレシピを唯一知っているコカコーラ社の重役3人が相次いで誘拐され、コカコーラがこの世から消える危機に。そこで絶対味覚の持ち主である主人公の少年とその友達が活躍するというストーリー。なかなか子供っぽいけど面白そうですよね。

作者はニュージーランドの方。なので舞台はニュージーランドからスタート。その後、コカコーラの危機を救うために舞台はアメリカへと移ります。

基本、コカコーラにまつわる豆知識を柱に、肉付けする形でイメージを膨らませ構成が行われています。頭で考えられている分、展開が読めやすいのが少し残念。

ただ勇気だったり、友情、子供が本来なら関わることのない大人社会と密に関わりながら成長していく様はとても健康的であり、中学生くらいのときに読んでいればもう少し私も立派な大人になってたかもと顧みる作品でした。

頭脳戦ではなく戦いの場面が多いのも子供を飽きさせないための配慮でしょう。適切に散りばめられ、作者の頭の良さが常に漂います。

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とりあえず、1番気になったのが、描かれる登場人物たちのイラストが全く内容にあってないこと。読んでいる限り、主人公の少年フィザーや親友ツパイの絵は絶対これじゃない。本当に酷い。これじゃ普通の大人は絶対に手に取らないでしょう。おっと本を手に取っても、おっとと棚にしまってしまうこと間違いなし。幼稚で、ニュージーランドの白人の子が日本人のイケメン顔になってるってあり得ないでしょう。百歩譲ってツパイは中国系ということでアジアっぽくてもいいけどこんなポケモンのたけしみたいなイメージでは読む限りありませんでした。

まあきっと出版社側が妙な気を利かせたのでしょうが、さすがに考えなしすぎますね。決してローカライズ作業を否定しているわけではありません。ただ、よくある失敗として、合わせすぎた結果別物になって本来の良い雰囲気が失われたということです。

この本は登場人物を子供からシャーロックホームズ的な大人の探偵に変えれば、そのまま大人向けの上質なミステリー小説にすることも編集次第で可能だと思います。ハリウッドで映画化すれば結構ヒットするはず。そのくらい面白い内容だっただけに、イラストという余計な味付けが足を引っ張る本当に悔やまれる一冊でした。