児童文学概論

ヤングアダルトジャンルを読み、感想を示します。個人の駄メモです。ネタバレあり要注意。

ゴーストドラム

不思議な緊張感が漂う作品。古の禁断の書を読んでいるかのような独特のオーラを感じる。物語もとても整然とされていて普通に面白い。ぶっ飛んでいるという感じではなく、昔話にリアリティのある残酷さや自然の強さが加わったような内容だ。ストーリーはとて…

魔使いの弟子

最初は全然面白くなく、読み終わるまでに2ヶ月もの時間がかかったジョゼフ・ディレイニーさんの作品。ただ、2ヶ月目には中盤から後半を一気に読んでしまったくらい面白かった。エンジンがかかるまでは遅いが、中盤以降の爆発力は眼を見張るものがある。タイ…

魔法の館にやとわれて

お馴染みのダイアナ・ウィンジョーンズさんの作品。原題は「Conrad's Fate」つまりコンラッドの運命ということ。かなり邦題ではコテコテにアレンジされていて残念だが、中身は抜群に面白かった。主人公のコンラッドは悪い業を背負っているとおじさんから言わ…

グリフィンの年 下

ダイアナ・ウィン・ジョーンズさんの生み出す想像力の結晶のような作品。時代や時空、種別をすべて頭の中で生み出し、個性的なキャラクターを生き生きと自由自在に操ってひとつの愉快な物語を描く。まさに魔法使いは作者自身なのではないかと思わずほどオリ…

トニーノの歌う魔法

呪文は性格な歌詞と音程で歌うことで魔法が発動するという、少し変わった設定が魅力的な作品。ロミオとジュリエットのようなソワソワする展開もあり、とても面白かったし、世界観は秀逸だ。これこそジブリでアニメ化すればとんでもなくあっさりと世紀の名作…

魔法使いはだれだ

ダイアナ・ウィン・ジョーンズさんの作品。ある中学の2年Y組の生徒たちが主人公となり、クラスの中にいる魔法使いは誰なのかを巡って起きるドタバタ劇。少し意外だったラストも含めてなかなか面白かった。唯一残念だった点は、登場人物の名前が多く、似たよ…

ペッパー・ルーと死の天使

イギリスの作家ジェラルディン・マコックランさんの2009年に出版された作品。日本語版は2012年に発売と割と新しい作品である。読んだ感想としてはちょっと残念な感じ。読み物としてはしっかりしてるが、何か期待していたものと違ったのかもしれない。14歳ま…

不思議を売る男

ジェラルディン・マコックランが書き、本国イギリスで1988年に出版され、1998年に日本語版が発売されたこの本。カーネギー賞とガーディアン賞を同時受賞したすごい作品だ。原題は「A PACK OF LIES」なので、だいぶ味付けされた邦題となっている。中身は不思…

グリフィンの年 上

ダイアナ・ウィン・ジョーンズさんの「ダークホルムの闇の君」の続編。前作がとてつもなくユニークな設定や世界観、キャラクターの繊細な描写で楽しまさせてくれた分、否応にも期待値高く読み始めた。まだ上巻を読み終えただけだが、もう満足感でいっぱいな…

ゴーストの騎士

ドイツの作家コーネリア・フンケの作品。「どろぼうの神さま」で有名な作者の2011年に本国で出版された本だ。とても読みやすく、シーンの描写も丁寧だし、人物を描くのもとてもうまい。幽霊や騎士、古い学校といったワクワクさせる要素もあるし、少年と少女…

ガンプ 魔法の島への扉

イギリスに住むエヴァ・イボットソンの1994年に本国で出版された作品。ネバーランドのような幸せな島からロンドンに出たときにつれさられた島の王子を探す物語。舞台は現代のロンドン。空想の世界と現代が繋がった不思議な冒険奇譚である。とても読みやすく…

錬金術

ニュージーランドの作家マーガレット・マーヒーさんの2002年に出版された作品。この方の本を色々と読んでいるとわかるが、初期の作品「足音がやってくる」の現代版リメイクのようだ。良い年のお婆ちゃんが書いたとは思えないほどティーンの恋愛をリアルに描…

魔法があるなら

デパートに住んでみたい。小さい頃にそんな想像をしてみたことがあると思う。しかも、閉店後まで店内に隠れて、誰にも気付かれずにそのまま自分だけが店内に残るなんて想像しただけでとってもワクワクすることだ。しかし、よく考えると、セコムのような警備…

見習い物語 上

イギリスの作家レオン・ガーフィールドさんの短編集。1982年に書かれたものだが、作品自体18世紀のイギリスを舞台に描かれているので、さらに古い感じがする。むしろ本当に18世紀に書かれた本を読んでいるような錯覚に陥るほど、当時の生活ぶりや街並み、風…

スピニー通りの秘密の絵

アメリカの女性作家ローラ・マークス・フィッツジェラルドさんの作品。「卵の下を探せ」という祖父の死に際の言葉から始まる物語。とても読みやすく、どんどん明かされて行く謎と近く真実。冒険をするようにとてもワクワクして読めた。ダビンチコードに近い…

顔をなくした少年

「穴」で知られるアメリカのルイス・サッカーさんの作品。正直、胸をえぐられるような、嫌な記憶が蘇るような作品である。子供から大人に成長する過程で、誰もが通るジレンマというか、もがきがとてもリアルに描かれている。日本人でも共感できる人は多いの…

骨董通りの幽霊省

イギリスの作家アレックス・シアラーさんの作品。ここまで幽霊にぴったり焦点を当てて書かれた作品は、同じくイギリスの作家ジョナサン・ストラウド氏の「ロックウッド除霊探偵局」以来だ。イギリスでは日本のように幽霊が身近な存在であり、テーマモチーフ…

魔女と暮らせば

とても面白かった。今まで読んだダイアナ・ウィン・ジョーンズさんの作品の中で1番面白く感じたかもしれない。なぜか随所から「ハウルの動く城」の感じが醸されていたが、それもまた悪くない。姉のグウェンドリンと弟のキャットの姉弟が両親が亡くなったこと…

七つの封印 4 黒い月の魔女

カイ・マイヤーさんによる七つの封印シリーズ第4弾。相変わらずの読みやすさだか、絶体絶命からのドンデン返しにはそろそろ飽きてきた。やはり魔女や魔物と戦うのに、ただの特殊能力のない子どもでは知恵にも限界がある。敵は子どもだろうと殺そうと本気で向…

歩く

「穴」(1998年)で一躍有名になったルイス・サッカーさんの作品で、穴シリーズの3作目であるこの「歩く」(2007年)。「穴」は出た当時すぐに読み、あまりの面白さに衝撃を受けた作品だ。ただ、その後、映画化もされたが、それも見ず、最近まで思い出すこともな…

魔空の森 ヘックスウッド

ざっくり言うと、ある森の周辺で起きた異変から物語が始まり、次々と意外な事実が明らかになってくるという話。世界を救うわけではないが、悪いやつをやっつけて新しいまともなやつに取って代わるという感じ。正直、かなり読みにくかった。物語の進行スピー…

牢の中の貴婦人

設定を把握しようとしているうちに最後まで来て、やっと状況を飲み込めたと思ったらあっさり終わった。絶妙な配分である。まったくロマンチックさがなく、どこまでも現実的だ。気付いたら幽閉されていて、記憶が曖昧で周りの状況すらわからない。そもそも知…

ダークホルムの闇の君

まず読み終わった感想を言わせて欲しい。なんて読み難い本なんだ。内容や設定などは他に見たことないほど斬新で、さすがダイアナ・ウィン・ジョーンズさんといった感じなのだが、日本語訳があり得ない角度で酷い。きっとあえて日本でもあまり日常で使われて…

メッセンジャー 緑の森の使者

どこか人里離れた森の先にある、迫害された人たちが集まってできた村を舞台にして物語が展開される。何とも言えない不思議な魅力のある作品だ。牧歌的でありながら、偽善的ですぐに崩壊しそうな危うさを含む。どこか新興宗教の人たちの集団生活を見ているよ…

嵐の王 3 伝説の都

長い冒険を終えた気分だ。ようやく長い悪夢から目覚めた気さえする。三部作のラストは前作である天空の少年ニコロに近い。世界を救う、変えて、みんなまたそれぞれの道に進み出すというキレイな終わり方。そこまでには数々の修羅場や生命を賭けたシーンの連…

七つの封印 3 廃墟のガーゴイル

テレビゲームにしたら面白そうなストーリーだった。七つの封印シリーズの三作目。毎回、実は登場人物のキャラクターや個性を持ってストーリーを引っ張るということはあまりなく、敵を中心にブンブンとストーリーが激しく展開される。だから基本的には防戦か…

不思議な尻尾

表紙から完全に女児向けだなと思いながらも設定に惹かれて読んでみた。その設定とは、その犬がシッポを振ると願いが叶うという割と単純なものだ。だからこそ、このベタな設定をマーガレット・マーヒーがどう料理して、何を伝えようとするのか気になった。読…

七つの封印 2 悪魔のコウノトリ

個人的に大好きなカイ・マイヤーさんの児童向けの作品。ただし、相変わらずダーク。日本の児童向けのファンタジー小説とはレベルが違う。日本の児童向けの作品は、怖いと言ってもドラえもん映画程度で、大人からすると全く怖くない。むしろイラつかされるの…

嵐の王 2 第三の願い

ドイツのファンタジー作家カイ・マイヤーの三部作のニ冊目。タイトル通り、魔人イフリートが持つ三つの願いを叶える力。そのナゼか失ってしまった三つ目の願いを叶える力がカギとなって描かれる。振り返ってみると相変わらず面白かった。強烈な性描写や残酷…

嵐の王 1 魔人の地

ドイツのファンタジー作家カイ・マイヤーの三部作の一冊目。毎回翻訳のレベルがとんでもなく高く、こちらもかなり引き込まれる内容だった。中身の感想を言うと、まず面白かった。世界観としては進撃の巨人に似ている。魔法の暴走によって生まれた魔人によっ…