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児童文学概論

ヤングアダルトジャンルを読み、感想を示します。個人の駄メモです

マディガンのファンタジア 未来からのねがい 上

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5年前の2012年に76歳で亡くなられたマーガレット・マーヒーさんの作品。

世界崩壊後の世界を舞台に、サーカス団であるマディガンのファンタジアが旅し、目的を叶える様子を描いている。

ワクワクする設定であり、おばあちゃんである作者が書くだけあって、まったく浮つかないのも好感触。出来るなら、世界崩壊について、フィロソフィーやアイロニー、謎と真実など詰め込みたくなるものだか、今のところまったくそこには触れられない。

目的地は決まっているが、一章ごとにクセのある村や町に立ち寄り、そこで起きる厄介な出来事をクリアにして、また次の町に向けて出発するという、まるで水戸黄門ドラクエを見ているような作品だ。

物語の鍵を握る未来から来た3兄弟とその3人を捕まえようとする2人の大人。ただの牧歌的な物語ではなく、未来から来たこの5人+不思議な力を持つとされるペンダント、タリスマンが絡まることで、クラッシックな文体なのに、ハイブリッドな今時のヤングアダルト作品になっている。

そのバランス感はとても興味深い。次の下巻でどんな秘密が明かされ、未来が待つのか。この上巻は長いフリであることを切に願う。きっと期待していいだろう。




アンランダン ザナと傘飛び男の大冒険 上

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タイトルのアンランダンは、否定を表すアンにロンドンの正しい発音ランダンを合わせ、ロンドンではない、つまりもう一つのロンドンという意味を持っている。


感想から言うと、なかなか面白かった。どこか不思議の国のアリスを読んでいるような個性的なキャラクターが出てきて物語に花と不思議を添えてくれる。

ニューヨークタイムズハリー・ポッター以降もっとも想像力にあふれたヤングアダルト小説と称したのはあながち間違いではないと思う。

裏ロンドンに迷い込み、奇妙な世界だけどなぜか惹かれ、ほっとけなくてつい干渉したくなる感じは映画版のドラえもんを見ているようでもあった。むしろ、すぐドラえもんとして映画化できるくらいの脚本だ。

この本で面白いのは、主人公はJCであるザナだとばかり思っていたら、親友のディーバが後半の主人公に変わっていたことだ。こんな編成はあまり見たことがない。最初のび太くんが中心なのに、途中からスネ夫がメインに代わるという感じは新しく、斬新に感じた。

イングランド出身の作者チャイナ・ミエヴィルは相当ヤングアダルトを読み込んで研究してきたのだろう。名作のオマージュから過去のパターンからの脱却を懸命に努めている様子が見受けられる。

割と読み進めるのが辛く、その世界に入るまで時間のかかる作品が多い中、このアンランダンは確かに優秀な作品だと言える。あとは下巻でどんな大どんでん返しを起こせるかだ。

敵であるスモッグに対してどこまで哲学的に掘り下げられるのか、少女たちは何につき動かせれて、成長を遂げるのか。珍しく期待して下巻が借りられそうだ。




天空の少年ニコロ 3 龍とダイヤモンド

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ネタバレします。

天空の少年ニコロ三部作のラストを飾る締めの巻。読み終わった感想としては長かった。天空の村から始まり、中国を旅しながら龍を探し、ラストは世界を救うというどこかで見たような展開に。そう、これはカイ・マイヤーさんの前作である「海賊ジョリーの冒険」と同じオチなのだ。

言葉にも原初の混沌という前作のキーワードとも言える単語が今回も登場するし、最後は男の子と女の子が力を合わせてラスボスをやっつけて世界を救った。

面白いは面白いけど違うオチや話を見たかった。とりあえず、やはりキャラクターはとても魅力的だった。違和感がなく、ブレないし、徐々に魅力が増すように繊細に描かれていくのはさすがの一言。ただ、月姫だけは作者自身もどう扱っていいか分からなかったような気がする。どうも1人感情がブレるというか、はまっていない感じが最後まであった。それはきっと逆に最初からキャラクターを意識し過ぎたせいだろう。中国のいわゆる仙女をトレースしすぎたせいで、その枠から抜け抱けず、ドイツ人であるカイ・マイヤーさんからしたら崩せなくなった可能性がある。他のキャラは架空の要素が大きかったので自由に動き回れたのに対し、月姫だけはつまらない感じだった。

一キャラクターだし、なにをそんなに責めるのかと思われるかもしれないが、もちろん理由はある。それはニコロと呪いによって愛に落ちるという重要なファクターを握り続けたからだ。1巻からのこの要素がまさか3巻までひっぱられ、最後はあっけなく終わった。さっさと月姫を殺すなり、真実の愛として叶ったりすればいいのに、長々と性描写を想像されるシーンまで交えながらズルズル進む。本当に気持ち悪い。実に不快だ。セフレみたいな感じだった。

童貞くんが綺麗なお姉さんと魔法の力で両思いになり、初めてエッチして舞い上がり、魔法が解けるのを必死で認めない感じで3巻が終わった。その間に龍が出てきて、巨人が出てきて、盤古エーテルに支配されて、世界が救われた。

もうこんな作品は2度と書いてくれるなとミザリー的に作者を監禁して説教したい気分だ。

もちろんそれは冗談だか、個人的には魅力的な世界観に、良いキャラクターを作れていただけにストーリーがさらに伴っていれば文句なく最高の作品になれたのにと残念でならない。

ただ、最後の難しい世界の終末や混沌とした地獄のような戦場を描いたシーンはさすがに素晴らしかった。荒削りながらも全ての伏線も基本的には回収したし、同時進行にいくつものストーリーを進める手腕は賞賛されるべき。

ニコロは多少エヴァのシンジ君的な部分もあったように思う。基本的にヤングアダルト作品は、思春期の葛藤から成長を描きたがる。ただ、個人的にはそういうあからさまなのはもう求めていない。

また、今回の作品で興味深かったのは、1巻以降、普通の村人が一切登場しなかったことだ。ずっと名前のあるキャラクターたちだけで話が進んでいった。1巻目にはあったニコロと普通の民の会話や龍の居場所を探る様子なんかはとても物語をリアルなものに感じさせてくれたし、ハラハラもした。もっと一般人も巻き込みながら展開できればより奥深い物語になったのではないだろうか。

それにしても最後あっけなかった。ラスボスである盤古は世界を滅ぼす天地創造主だったはずが、何の意思も感じられない大きめの巨人でしかなかった。また、心臓が体の割に小さすぎるのには呆れるよりも笑った。本当にあれが最適だったのか疑問しかない。ゲームのFF6みたいに1度世界を崩壊させて、そこから盤古を倒して世界を救うという展開や、24的に世界崩壊まであと残り3時間とかそういう軸の中で展開させても面白かったんじゃないだろうか。

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フェイキンのキャラクターは最後まで呪いが解けなかった、いや本人の意思で解くのをやめたのだろう。最後、小道を登るときにつまずき、罵しる声が聞こえたのは、以前と変わらず動きづらい着ぐるみ姿だったからに違いない。

アルテミス・ファウル 北極の事件簿

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ネタバレあります。

まず最初に、こちらは1巻かと思って間違えて借りてしまった。読みながらなんか知らない言葉がどんどんでてくるなと思っていたらまさか2巻だったとは。表紙にナンバリングがあるのかないのか分かりづらく、最後の広告欄で1巻だと確認したはずだったのに失態。

もちろん、1巻を読んでなくても状況は理解できるし、むしろもう1巻でどんな出来事が起こったかさえも知ってしまった。

そして、そろそろこの本の感想を結論から言おう。合わなかった。むしろあまり好きじゃないかも。

思ったよりも子供向きだと感じた。読むまでのイメージは割と大人向きで、中身も難しい言葉が多いにも関わらず、キャラクターの言動がいちいち鼻につくほど大げさで、どんどん嫌いになってしまった。

特にルート司令官の言動はありえない。サウスパークを見てるのかと思うほど、いちいち大げさでわざとらしい。

しかも見なければ良かったと後悔したのが、裏表紙をめくった最後のページに堂々とプリントされた著者のポートレート。たまたま読んでいる途中で目に入った瞬間、ミスタービーンみたい!って思ってしまい、それからもう内容のつまらなさと相まってどんどん腹が立ってしまった。

人を楽します、驚かすのが好きそうな好奇心に満ちた作者オーエン・コルファーさんのどう?面白いだろ?って目が、私の中のハードルを上げ続けてしまった。

答えは面白くないだ。もちろん大人が読むにはという意味で。子供なら楽しめるだろう。このブログのタイトル通り、子供向けだろうが大人が読んでも楽しめて、学ぶことを見つけるのが目的である。

主人公のアルテミスは中学生?ながら天才犯罪者であり、バトラーという屈強で従順な執事を率いている。この2人の関係性やキャラクターは当初とても魅力的に感じたが、思ったほどではなかった。まず、アルテミスが全然天才じゃない。もっとコナンくんばりに頭脳明晰かと思っていたら普通に少しだけ大人びた中学生だった。全く活躍しない。最高のヒントももたらさない。設定が嘘になってしまった。前回はすごく頭脳を使って活躍したようだが、今回は出番がなかったようで残念だった。

正直、読んでいるうちに、勝手にアルテミスとバトラーを黒執事のセバスチャンとシエルとして脳内変換して動かしていた。まあだから思い通りにならず、これほどまでに失望させられたのかもしれないが。

特に不満なのが、最初、アルテミスの父親が難破して誘拐されてしまい、身代金を要求するロシアマフィアとどう戦うかって話だったから面白そうと思ったのに、実際はその部分は最後にちょちょっとしか描かれない。しかも、あっさり解決して、父親と息子の愛情なんかも皆無だった。父親をアルテミスは何が何でも助けたいという当初の設定が崩れていた。大部分は地下世界の反乱が描かれて、さほどハラハラもせず、裏切りによりドンデン返しにこだわった作者の意図が見え見えで興ざめしてしまった。

イギリスの作品はジョナサン・ストラウドさんを通して出来がいいと思い込んでいたのも災いしたのかも。ただ、一つ、この評価が私だけの厳しいものでないことをお伝えもしたい。

すでに本国イギリスでは8巻+外伝3冊が出版社されている。しかし、日本では5巻までしか訳されておらず、すでに時間の経過から見て今後発売されることもないだろう。これが何を意味するか当然わかると思う。面白くなくて、翻訳しても売れないから出版社も意気揚々と権利を買って日本で発売してきたが途中で放棄したのだ。

まあ他の巻を読んでないから詳しくは説明も確認のしようもないが、遠からず日本の読者にこれ以上求められてないということは事実だろう。

勇者の谷

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バーティミアスシリーズでおなじみのジョナサン・ストラウドの2009年に日本で発売された作品。

短いあとがきまで含めて587ページもある超大作。とにかく長い。物語に入り込むまでずいぶん時間がかかった分、読み終えるまでにかなりの時間を要した。

結果的に面白かったが、その面白さに見合う時間なのかどうかはわからない。

とにかく主人公のハリが全然好きになれない。ただのイラつく田舎者のガキでまったく共感できない。これはこのページ数を読むうえで最大の難関だ。さらに後半に入るまでまったく面白くない。本当に何なんだこれって思うだろう。きっと最後まで読める人はかなりの変わり者か暇人だろう。

もともと恋愛が入った物語が嫌いなので、アウドが出てきてからは嫌な予感しかしなかった。醜いハリと美しいアウド…美女と野獣といった構図は1番見たくなかったが、まあ見ずには済んだので良かった。最後に少し暗示されてはいるが…。

最近の作品の中ではかなり異色の本だと思う。逆に言えばどストレートな王道の物語らしい物語なんて近年書かれていなかったんじゃないだろうか。だからあえて作者は書きたかったのかもしれない。

ラストのトローの正体が先祖のゾンビだったという部分は、ジョナサンらしいパンチの効いた大オチだったし、とても皮肉が込められている。

古い習慣や生活に対する信仰にも近い保守的な部分に対し、縛り付けられていることに気付けと、どこにも行ける自由があるのになぜ行動できないんだという想いが込められていたように思う。

イギリスだけでなく、日本にも当てはまるだろう。田舎で育ったものは、東京や大都市に出てくることはおろか、海外に出て暮らすなんて発想すらない。地方の田舎は、思っているよりずっと保守的で、諦めにも近いものがある。そこで生まれ育ったものに求められるのは何だろう。本当に生まれた瞬間から退屈な人生を受け入れるだけしかないのか。都会でも同じだ。これは田舎がダメで都会に行けと言っているわけではない。まだ見ぬ世界への憧れや興味を行動に起こすための答えである。

閉ざされた世界の中での幸せもある。それを心の底から求めている人もいる。
今回の勇者の谷に近いのはムーミン谷かもしれない。
ムーミン谷はそれでも幸せそうに描かれる。毎年訪れる季節を細やかに迎え入れ、日々を過ごす。その中にスナフキンがいた。スナフキンはいつも旅をして面白い話をムーミンに聞かせる。だけど勇者の谷は違う。谷の外へは出られない。出られないことになっているから。そんな中でも必ず外に出ようとするものが現れる。それは閉ざされているからこそ、反発するものが出てくるのか、必然なのかわからない。秩序があれば、それに逆らうものが生まれることが自然の摂理なのかもしれない。

ジョナサンは昔話に自身のエッセンスを取り入れた実験的な作品をかいた。それがこの勇者の谷だ。オールドスクールを今やってのけた感じだ。




天空の少年ニコロ 2 呪われた月姫

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2巻になって一気にスピードアップ。もはやドラゴンボールみたいになってる。ラストの龍の門なんかは頭の中でシェンロンが思い浮かんでたし。

月姫がいることで逆に物語が狭まっているような気がする。物語に恋愛や愛がはいるとロクなことにならないから、今回も入れるべきではなかったと思う。ニコロと月姫のことばかりにフォーカスが当たるのでせっかくのワクワクする設定が薄れてしまっている。

あと不老不死である仙人が弱すぎる。すぐ死ぬし、読んでいてストレスが溜まる。あと1巻で終わるわけだが、とにかく望むことは月姫が早く死ぬこと。もしくは助けるなら月姫エーテル側からこちら側の味方になること。

また気になるのは、引き続きフェイキンの正体だろう。

本当にこのニコロシリーズも前回のジョリーシリーズもそうだか、なぜこんなに主人公の男子がクズなのか。カイ・マイヤーさんは思春期の男子に何か勘違いをしているし、トラウマでもあるのかと疑ってしまう。

主人公の男子の心が弱すぎて、読んでいてこちらも病んでしまう。ガンダム的な感じ。ここから最後に向かってその弱かった主人公が勇気をみて、弱さを乗り越えるところを見せることで読書にカタルシスを味合わそうとしてるならもうやめて欲しい。大半の読書はカタルシスを味わう前にとっくに離脱してしまっているだろうから。

盗まれたコカコーラ伝説

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ヤングアダルトって言葉に相応しい一冊。いささか表現力は乏しい部分もあったけど、おやつ感覚で楽しめました。


対象は中学生くらいかな。見た目では小学生向けだと思うでしょうが、意外と内容は難しとこもあるので、きちんと理解して読むとなると中学生からかなと。

コカコーラのレシピを唯一知っているコカコーラ社の重役3人が相次いで誘拐され、コカコーラがこの世から消える危機に。そこで絶対味覚の持ち主である主人公の少年とその友達が活躍するというストーリー。なかなか子供っぽいけど面白そうですよね。

作者はニュージーランドの方。なので舞台はニュージーランドからスタート。その後、コカコーラの危機を救うために舞台はアメリカへと移ります。

基本、コカコーラにまつわる豆知識を柱に、肉付けする形でイメージを膨らませ構成が行われています。頭で考えられている分、展開が読めやすいのが少し残念。

ただ勇気だったり、友情、子供が本来なら関わることのない大人社会と密に関わりながら成長していく様はとても健康的であり、中学生くらいのときに読んでいればもう少し私も立派な大人になってたかもと顧みる作品でした。

頭脳戦ではなく戦いの場面が多いのも子供を飽きさせないための配慮でしょう。適切に散りばめられ、作者の頭の良さが常に漂います。

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とりあえず、1番気になったのが、描かれる登場人物たちのイラストが全く内容にあってないこと。読んでいる限り、主人公の少年フィザーや親友ツパイの絵は絶対これじゃない。本当に酷い。これじゃ普通の大人は絶対に手に取らないでしょう。おっと本を手に取っても、おっとと棚にしまってしまうこと間違いなし。幼稚で、ニュージーランドの白人の子が日本人のイケメン顔になってるってあり得ないでしょう。百歩譲ってツパイは中国系ということでアジアっぽくてもいいけどこんなポケモンのたけしみたいなイメージでは読む限りありませんでした。

まあきっと出版社側が妙な気を利かせたのでしょうが、さすがに考えなしすぎますね。決してローカライズ作業を否定しているわけではありません。ただ、よくある失敗として、合わせすぎた結果別物になって本来の良い雰囲気が失われたということです。

この本は登場人物を子供からシャーロックホームズ的な大人の探偵に変えれば、そのまま大人向けの上質なミステリー小説にすることも編集次第で可能だと思います。ハリウッドで映画化すれば結構ヒットするはず。そのくらい面白い内容だっただけに、イラストという余計な味付けが足を引っ張る本当に悔やまれる一冊でした。