児童文学概論

ヤングアダルトジャンルを読み、感想を示します。個人の駄メモです。ネタバレあり要注意。

トニーノの歌う魔法

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呪文は性格な歌詞と音程で歌うことで魔法が発動するという、少し変わった設定が魅力的な作品。

ロミオとジュリエットのようなソワソワする展開もあり、とても面白かったし、世界観は秀逸だ。

これこそジブリでアニメ化すればとんでもなくあっさりと世紀の名作が誕生するだろう。

魔女の宅急便ハウルの動く城を足したような、痛快な作品だ。

パンチ・アンド・ジュディというイギリスの伝統的な人形劇が物語のキーワードにもなっていて、非常に物語にダークさと奥行きを足している。

絶対に読んでみてほしいと思えるいい作品である。

魔法使いはだれだ

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ある中学の2年Y組の生徒たちが主人公となり、クラスの中にいる魔法使いは誰なのかを巡って起きるドタバタ劇。

少し意外だったラストも含めてなかなか面白かった。

唯一残念だった点は、登場人物の名前が多く、似たような感じだし性格も似たり寄ったりで、全然誰が誰だか誰なのか中盤まで覚えられないまま読むことになることだ。

正直、主人公が誰だったのかいまだによく分からない。少なくとも途中からナンとチャールズの2人はメインキャストだとはわかったが。

もう少し、登場人物を少なくするか、外見や性格の面でキャラを立ててくれないと、知らない学校のクラスに自分が突然送り込まれて、傍観しているような感じになる。

クレストマンシーシリーズとのことだが、あくまでメインは学生たち。

どこの国だろうといじめっ子がいて、いじめられる子がいて、友達だったり、嫌なやつがいたりするのは変わらないなと思う一冊。

ペッパー・ルーと死の天使

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イギリスの作家ジェラルディン・マコックランさんの2009年に出版された作品。日本語版は2012年に発売と割と新しい作品である。

読んだ感想としてはちょっと残念な感じ。

読み物としてはしっかりしてるが、何か期待していたものと違ったのかもしれない。

14歳までに死ぬと予言された1人の少年ペッパーが、じっと死を待つのではなく、運命から逃れようと海に出たことから物語は始まる。

行く先々で問題も起こすし、人が死んだりするが、持ち前の優しさで愛されもする。

ただ正直、読んでいる側としてはペッパーのことを好きになれなかった。

作者は忠実に14歳の少年を描いたつもりなのだろうが、逆にそれがいけなかった。世間知らずだったり、発想が幼稚すぎて読んでいてイライラする。それなのに、大きな問題を解決しようと大胆に首を突っ込むから物事がややこしくなる。

それが面白さじゃないかと言われたらそうなのかもしれないが、実際に法やルールを破っているため、その大胆さや優しさが余計に独り善がりのもので腹ただしく感じるのだ。

最後のオチも、未成年の少年がやったことだから、全部チャラだよねという責任を持たないところもただただ面白くない。

主人公は一度だって責任を取らなかった。痛い目にもあっていない。嘘をついてお尻をぶたれることも、涙ながらに説教されることもない。

死んでしまう運命が悪いと、好き勝手嘘を重ねて、エープリルフールだって優しい嘘だから許されるなんてことはない。

周りをめちゃくちゃにして、最後は逃げて次の面白い生活の始まり、みたいな後ろ向きなくせに、優しいから許してみたいな感じが最高に気持ち悪かった。

作者はチャップリン的な痛快なドタバタ劇を描きたかったようだが、キャラやユーモアを間違えてしまったようだ。

チャップリン星の王子さまを足したような歪なストーリー。完成度は30〜40パーセントといったところか。タイトルやあらすじを見て期待をして読みたくなるのは私も同じだったが、オススメはしない。

唯一良かったのが、舞台が1910〜20年の古き良きフランスという点だけだ。

不思議を売る男

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ジェラルディン・マコックランが書き、本国イギリスで1988年に出版され、1998年に日本語版が発売されたこの本。

カーネギー賞とガーディアン賞を同時受賞したすごい作品だ。

原題は「A PACK OF LIES」なので、だいぶ味付けされた邦題となっている。

中身は不思議な短編を1つのストーリーの括りの中で見せて行くというもの。

お婆ちゃんが、孫に夜な夜な不思議な物語を聞かせるというフォーマットに近い。ただ違うのは、夜な夜なではなく、骨董屋のなかで、来たお客さんにそれを話して買ってもらうという中で、その周りにもストーリーが展開されることだ。

確かに目新しい感じはするが、いまいちハマらなかった。

不思議な男が物語を語って、客が引き込まれてその商品を買うという連続に途中て飽きてしまうからだ。どんでん返しや逆境に立つことが一度もなかった。

しかも最後に不思議な男が店を去る理由も不明だし、何者だったのかも曖昧で、ただ作者がオチを逃げたとしか思えない。

読書の想像に任せますというのは良い時もあれば絶対に使ってはいけない時もある。今回がまさにその時だ。

前振りや伏線を最後にすべて回収すべきだった。そういう本だと思ったし、読み進めるにつれて自然と気持ちが高まった。

1988年の当時では評価されたかもしれないが、今読んで普遍的な面白さがあるかと聞かれたらNOだろう。

不思議な男MCCはもっと不気味に描くべきだった。もっと敵か味方か、人間か悪魔なのか分からないようにもっと謎を散りばめて、伏線を張るべきだった。

中途半端に人間的で優しく、これでは普通のそこら辺にいる販売員さんである。

何もMCCの正体に期待もドキドキワクワクしなかった。興味を惹かれない。外見もありがちな風変わりさで、中途半端だ。

これは、この作者の性根の優しさが、作品に出ているのだろう。すごく優しくて、児童書で誰も傷つけず温かい気持ちになってほしいという気持ちが込められているのはよくわかる。

ただ、それが読み物としての完成度を下げている気がする。

情景描写はとても上手いので他にも作者の作品を読んで見たいと思うが、キャラクターにこれ以上共感できなければ、私には向かないということだろう。

グリフィンの年 上

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ダイアナ・ウィン・ジョーンズさんの「ダークホルムの闇の君」の続編。

前作がとてつもなくユニークな設定や世界観、キャラクターの繊細な描写で楽しまさせてくれた分、否応にも期待値高く読み始めた。

まだ上巻を読み終えただけだが、もう満足感でいっぱいなほど面白い。まだ前作の狂気じみた面白さを超えてはいないし、キャラクター名と顔がたまに一致しなくなる点は変わらないが。

ハリーポッターの魔法学校ではなく、ここは魔術大学。そこに新一年生として入ってきたそれぞれ過去や秘密を抱えた6人。誰も見たことのないけど確かに共感できるキャンパスライフが描かれる。

前作を読んでいた方が間違いなく楽しめる。大学勤めの魔術師の先生方のキャラクターはとても愉快で人間くさくもある。さすがダイアナ・ウィン・ジョーンズ先生だ。

ネズミにさせられたまま逃げ出した海賊と殺し屋が、次の下巻でどのような騒動を巻き起こすのか。間違いなくさらにドタバタを極めることになるはずだ。

ゴーストの騎士

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ドイツの作家コーネリア・フンケの作品。「どろぼうの神さま」で有名な作者の2011年に本国で出版された本だ。

とても読みやすく、シーンの描写も丁寧だし、人物を描くのもとてもうまい。幽霊や騎士、古い学校といったワクワクさせる要素もあるし、少年と少女の恋愛的な要素もある。

とりあえず読んでおいて損もなく、お値打ち感のある本だ。

一点だけ気になる点があるとすれば、主人公ジョンのことがきっと好きで、色んな場面で無条件に助けてくれるエラが、なぜジョンのことが好きなのか。好きになったのかが全く語られないまま、死を覚悟してでもジョンを守ろうとするのは説得力がなさすぎる。

同じ霊が見えるという点だけではなく、何かしらのきっかけがないとそこまでできないはずだ。割とこの2人の硬い信頼関係がベースにあってこそ、この物語は筋を成しているので、もう少しその辺りがうまく語られると尚良かっただろう。

史実に基づいているというのもとても面白い試みだ。完全創作でない分、歴史を知らない日本人の我々が読んでも自然と納得してしまう妙な説得力があるのだ。作者の他の本も読んでみたくなる、そんなきっかけになるようなチャレンジングな作品である。

ガンプ 魔法の島への扉

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イギリスに住むエヴァ・イボットソンの1994年に本国で出版された作品。

ネバーランドのような幸せな島からロンドンに出たときにつれさられた島の王子を探す物語。舞台は現代のロンドン。空想の世界と現代が繋がった不思議な冒険奇譚である。

とても読みやすく、設定もユニークで単純に楽しめた。ゲゲゲの鬼太郎的な雰囲気に慣れた日本人ならすんなりこの設定にハマるはずだ。

特にこの中に出てくる不思議な生き物キリフキは印象的だ。丸くてふわふわでポメラニアンをさらに丸くしたような姿を想像し、誰もがきっと癒されるはずだ。

読み始めると、すぐにつれさられた王子が誰だかわかるのも一興。我々も知らないふりして温かく読み進めるが、最後にこの人が実は王子でした!ってなるが最初から知ってたよという。

普通ならわかった時点で、冷めてしまう気もするがちゃんとその上で最後まで読ませる暖かさみたいなものがある。難しくないので少し疲れたときや、軽くリフレッシュしてみたいときに読むといいかもしれない。